ミヤイリガイと日本住血吸虫症の関連性とは?

この記事を見てくださっている皆さんは、ミヤイリガイ(宮入貝)またはカタヤマガイ(カタヤマガイ)という貝をご存知の方はいるのだろうか?

このミヤイリガイは日本の利根川や筑後川に広く分布していた巻貝です。現在、ミヤイリガイは絶滅危惧種に指定されていてほとんど私たちが目にすることがありません。

 

大抵絶滅危惧種の生物は人類の乱獲や生息域の変化、天敵の出現によって生存数が減少してするのが普通ですがこのミヤイリガイの場合ちょっと事情が異なっています。

 

 

日本住血吸虫とミヤイリガイ

日本住血吸虫症という日本で局所的に流行していた病があります。特に山梨県の甲府盆地が日本最大の有病地でした。

この病は古くからあり武田信玄の家臣も日本住血吸虫症で命を落としたといわれています。戦前この病は甲府盆地特有の奇病・風土病と言われていました。

この病は寄生虫が体内に入り、寄生虫が体内に卵を産むことで症状が出ます。主な症状は肝硬変や目が黄ばんでしまう黄疸、腹部に水がたまり歩行すら困難になります。

 

この寄生虫は水中では数時間しか生きることはできずミヤイリガイの中でのみ成長します。ミヤイリガイの中で成長後水中に飛び出して人間を含む哺乳類に寄生します。

 

このミヤイリガイの中でしか成長できないというところがポイントで、ミヤイリガイを絶滅させることができればこの寄生虫も絶滅させることができるのです。実際、日本が行ったのもこの手段でした。

 

ミヤイリガイ駆逐の道程

ミヤイリガイは繁殖力が強くまた、陸上でも生存可能なことから駆逐は困難を極めました。初期では甲府盆地住民が箸とお椀でミヤイリガイを一つ一つ摘み取るなどして集めていました。この背景にはミヤイリガイが水田でも生息していたことから生活を怯えさせる要因であったことが挙げられます。

 

ミヤイリガイの殺貝手法は次第に科学的な手法に代わっていきました。殺貝に非常に効果を上げた方法として生石灰(酸化カルシウム)を用いた方法があります。生石灰を河川などの水の量に対して1-2%加えることで高い殺貝効果が認知され多くの河川で石灰散布がなされたのです。また、河川のコンクリート化によりミヤイリガイの繁殖を防ぐこともわかり山梨県の河川はほとんどがコンクリートに代わられています。このコンクリートの河川は直線距離にして北海道から沖縄の距離に相当します。

 

こうした地域住民や行政によって1978年の感染者を最後に人間への感染は確認されず山梨県は日本住血吸虫症の終息宣言を行い、長きにわたって地域住民を苦しめてきた地方病は根絶されました。

 

しかし日本住血吸虫症は日本という名前が入っているにもかかわらず日本固有の病気ではなく中国や東南アジアでは今なお感染者が続いています。いったん重症化すると治療が困難なため海外旅行の際にはくれぐれも素足で河川に入らないよう注意することが肝心です。

 

いかがだったでしょうか?

ミヤイリガイは人類が意図的に絶滅させようとした稀な貝です。しかしミヤイリガイ自体に害はなく、ミヤイリガイ自体も寄生虫の犠牲者です。そのため福岡県などではミヤイリガイの慰霊碑があります。

日本住血吸虫症は現在でも海外旅行などで発症する危険性は十分にありますので河川に近づかないことが重要です

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